静岡新聞「薬の相談室」
コレステロール下げる脂肪—高脂血症、血栓症予防に 魚油やエゴマ油摂取
質問
76才の男性。肉や乳由来の動物性の脂肪ではなく、植物性の脂肪で、綿実油やひまわり油に含まれるリノール酸は、コレステロールを下げて体によいと昔から言われていましたが、最近ではあまり勧められないと聞きました。なぜですか?
回答
リノール酸は、n-6系脂肪酸と言われる不飽和脂肪酸で、マーガリン、マヨネーズ、紅花油などにも多く含まれ、体内では合成されないため食物から摂取する必要があります。しかし、コレステロール値を低下させますが、善玉のHDLコレステロールも同時に下げてしまうこと、アレルギー反応を悪化させアトピーの要因になること、過酸化脂質を増加させることなどもわかってきました。また、時代背景として、昔はがん、動脈硬化が問題になるほどの長寿ではありませんでした。
現在のような長寿社会では、内臓肥満やメタボリックシンドロームが問題となります。健康的な体を保つためには、高脂血症や血栓症によいとされるn-3系脂肪酸の不飽和脂肪酸を積極的に摂ることが勧められます。
n-3系脂肪酸は、青魚やクジラなどの海で生活する動物の脂肪の魚油やシソ油、エゴマ油に多く含まれ、摂取する場合は、n-6系脂肪酸との比率が重要です。
体に必要なさまざまな働きをするこれらの脂肪酸のバランスは、「n-6系脂肪酸」対「n-3系脂肪酸」=4~3:1が望ましいと考えられます。現代の日本人では7~5対1ですから、魚を1日1回食べるなど工夫してこの目安に近づけてください。
(社)静岡県薬剤師会・医薬品情報管理センター所長
大石順子